MAIHA-MAN

ANOTHER WORLD

『10機撃墜、次のステージに移行します』 機械的な女性の声に桃子ははっと目を覚ました。目の前には『Next Stage』の文字。 さきほどと同じゲーム機のカプセルの中だ。 今、一瞬眠っていた?どのくらいだろう?ゲームは続いているみたいだし、自分は撃墜され…

HOSPITAL

病院、医師と看護士。 深刻そうな表情をした人々。 重い空気。 消毒液の匂い。なんとなく逃げ出したい思い。病院に着いた途端、舞波の心にはなんとなく暗く重い感情が流れ込んでいた。「桃子!」 病室の扉が開くなり、舞波は思わず知らず叫んでいた。 「シー…

TRAINING

舞波は走っていた。 そろそろいつもの公園に着くはず。 あの日から3か月、最初はちょっと走っただけで息切れしたが、とりあえず5kmくらいは楽に走れる様になってきた。自分が目指すべきところがどこなのか、多分もっともっと高いところを目指さなきゃいけな…

NEW GAME

「それでは操作方法の説明をしますのでよく聞いてくださいね」係員の言葉にはーいと黄色い声が一斉に響く平日の午後二時、都内のアミューズメント施設の一角を借り切っての撮影 カメラや照明のスタッフを見た一般客が何事かという顔で見ているが、すぐに興味…

幻影

空、蒼く広がる空、そして海。 上も下も蒼い世界。 蒼い世界の中に白い雲が点在する。自分は今空を飛んでいる? どのくらいの高さなんだろう?桃子はぼんやりした意識の中で考えていた。 目の前の何かの光。 記号?何の記号だろう?コンピューターゲームの様…

抱擁

桃子は跳んだ。 阿久津たちがいる屋上の外へ。地面に降りると一般の歩行者達が居たが皆一様に静止していた。やっぱり。 またゲートが開きかけている。 れいなが全身を炎と化して襲い掛かる。体当たりするようなれいなの攻撃をギリギリのところでかわす桃子。…

先輩?後輩?

「グレイマスクさん、田中さん、もう降参してください。勝負はつきました」 桃子が悲しげな表情で語りかけた。「ずいぶんと自信満々ですね」 グレイマスクは阿久津に足と肩を押さえられた状態のまま、不敵な口調を崩さない。「私は勝ちます。何があっても」 …

さゆみVS桃子

「れいな、下がってて」 明らかに不機嫌そうな声でさゆみがれいなの前に出る。 その声にびくりと反応したれいなは素直に後ろに下がった。「桃子ちゃん、一対一で相手してあげるわ。けど」 さゆみが厳しい表情で桃子を睨む。 「手加減はしてあげられないわ」…

桃子の咆哮

「桃子ちゃん、あたしたちと戦うの?」 さゆみがぞっとするほど冷酷な声を発した。 テレビで見るブラックぶりっ子キャラとは大違いのその声に桃子はぞくりとするものを背中を感じた。「やめといたほうがよかね」 れいながにやにや笑いながら桃子を見る。「ち…

疑念

田中れいな、道重さゆみ、二人とも桃子、ゆりな、そしてかつては舞波も所属していた芸能事務所の所属タレントである。 年齢差から舞波達のほうが後輩だと思われている向きもあるが、実際には舞波達が半年ほど先輩にあたる。ふだんは違うユニットに所属するゆ…

二人の刺客

「阿久津さん」 舞波が阿久津のそばに駆け寄る。 桃子、ゆりなも後に続く。周りを見る限り、リーダー格を除き、グレイマスク達はどこかに消え去っている。阿久津を中心に舞波達3人。そして10mほど離れた位置にグレイマスク。好奇心から集まり始めた通行人達…

混戦・混乱

刻の止まった街、目黒の街中を無数の光線が錯綜する。 舞波たちは店の外に出てグレイマスク達との戦いを繰り広げていた。ビルの壁を蹴り宙に舞い、気合一閃、指先からエネルギー波の様なものを撃ち出すメンバー達。SFやアニメで見た様な特殊能力合戦。舞波達…

INVADOR

「キキッ!」猿の様な声が店内にこだまする。 舞波達は自然と阿久津のそばに背中合わせに集まっていた。暗くなった店内にぼうっと何かが浮かび上がった。顔?グレイマスク? まるで宇宙人の顔の様な大きな目をした顔がいくつか暗闇に浮かび上がっていた。マ…

Cafe Buono! 2

「本当に次元獣に襲われたのですか?」 阿久津はカウンターに座った桃子とゆりなに交互に視線を送った。 「少なくともあんな生き物は見たこと無いよ」 ゆりなが真顔で答える。桃子は何かを思い出そうとするかの様に瞳を閉じた。 「名前はともかく、そんなに…

Cafe Buono!

カラン! 春一番が吹いた日曜日、舞波は目黒にあるカフェの扉を開いた。 Cafe Buono!、表のいかにもな感じのウッドの看板にそう書いてあった。舞波は店内を見回し、カウンターの空き席にすっと座る。「いらっしゃい、何にいたしましょうか?可愛いお嬢さん」…

ENJOY!

都心を離れ郊外へと向かう電車。 疲れた人々を乗せ混雑した車内で興奮にも座席に座ることができたゆりなはうとうとと眠りかけていた。 学校が終わると都心に出てコンサートのリハーサル。遊ぶヒマも無く夜になり自宅に帰る。 自ら望んで入ったこの世界だけど…

小さき獣

何? こいつらが何か? 桃子は自分が縛り上げた少年達を見る。 しかし彼らに何かができる様には見えなかった。桃子の周りが金色の光に包まれる。 少年達は呻き声を漏らしながら意識の合ったものまで、がくりとうなだれ眠りにおちた様に動かなくなった。この…

ピンクの自警活動

さっむいなあ。 桃子は両腕で自分の体を抱えながら夜の道を足早に歩いていた。 一昨日雪が降ったばかりだし、最近なんだが寒い日が多い。地球温暖化とか言ってるけどホントだろうか?時間は既に夜中の1時を回っている。 ホントならこんな時間に外には出歩か…

舞波ノート

次元獣は桃子の光の剣に頭部を貫かれ倒れたままだった。 ピクリとも動かない。阿久津がよろよろと立ち上がる。 全身ぼろぼろの姿に戦慄を覚える舞波。「なんとかアイツを倒すことができたようですね」 阿久津は金色の獣に視線を向ける。次元獣の周りの空気が…

魔獣

巨大な獣はグルグルと喉を鳴らした。 舞波達は見たこともないその獣を前にして立ちすくんでいた。 全身を金色の毛で覆われた豹の様な巨大な野獣。 舞波達3人と獣の間に阿久津が立った。 まるで自分の背中で3人を守る様に。舞波にはなんとなくそんな風に見え…

変身

「なかなかステキな衣装ですね?嗣永桃子さん?」 阿久津は3人目のマイハマン登場に全く動じず、桃子を見つめた。「私はマイハマンピーチ、嗣永桃子とかいう人はカンケーありません!」 桃子はヘルメットに仕込まれたボイスチェンジャーがオフのままであるこ…

3号

「どこに行ったんだろう?」 「見失ったね」 舞波とゆりなはスタジアムの広い客席を見渡したが、仮面の男たちは見当たらなかった。 「どこを見てるんですか?」 聞き覚えのある声が響いた。「阿久津?」舞波は声の主を探す。「ここですよ、ここ。フィールド…

追跡

「きえええええええええええええええええええええええええ」奇声を発して、仮面の男のひとりがれいなのそばを離れ走り出した。 アリーナに下りたゆりなに向かって一直線に走る。 正確に言えば、フロアに敷き詰められた可動座席の上の跳んでいた。「このお!…

生着替え

「熊井ちゃんなの?あれ?マイハマンって…」れいなは自分を助けに来たらしい二人組に混乱していた。「なんとか間に合ったね」ゆりなは舞波の方を向き、バイザーの内側で笑みをもらした。 「間に合って無いじゃない。田中さん捕まっちゃったし」舞波はほんの3…

アリーナ

1月最後の土曜日、舞波は横浜にいた。 新横浜駅から徒歩5分の場所にある巨大なイベント施設、横浜アリーナ。 朝の冷たい空気の中、週末2日間に渡って開催されるコンサートのリハーサルが行われている。 今では年に一度になってしまったお祭り。同じ事務所の…

桃子の帰還

桃子は会場に戻った。 つんく♂が信頼できるスタッフを呼び、そのスタッフの車で会場に送らせた後、自らはゆりなと舞波を連れ帰った。「ちょっとぉ、心配させないでよぉ」 「どこ行ってたのびっくりしたでしょ」 メンバーからの問い掛けに桃子は曖昧に頷くだ…

正義の味方2

「コンサート会場からアイドルを誘拐するなんて、何が目的!!」ゆりなはノリノリでサングラスの男を指差した。 ゆりなと舞波の会話はヘルメットから外で待機しているつんく♂の元に送信されている。 ヘルメットにはカメラも仕込まれており、二人が見ている映…

突入

桃子は連れ込まれた車の後部座席に寝転がる体制で天井を眺めていた。 車の中で足首にもガムテープを巻かれ自力で起き上がれない。 窓からの景色を見てもこの車がどこに行こうとしているのかはわからなかった。「いいんすかね?こんなことやって?」前の座席…

非常事態

つんく♂さん、あんなこと言ってたけど何も連絡無いなあ。 学校も冬休みに入り、舞波はごく普通の受験生としての生活を送っていた。 ゆりなと雅からはあれからたまにメールが入るが、自分が司令官になると豪語した金髪のプロデューサーからは何も連絡が無い。…

3人目の少女

桃子は街中をひとり歩いていた。 午後4時。太陽が大きく傾き、空が薄い闇に覆われはじめている。マスクで顔を隠し、深く帽子をかぶり、周りの人間が自分が何者か悟られないように。 実際問題として、自分の顔を見てすぐに誰だか言い当てられるのはほぼ決まっ…