Let's Have A Lunch

「えーっと、これはどうすれば」レイナの買い物に付き合ったあと、二人はもう一度携帯電話売り場に戻って、真新しい端末を受け取った。俊弥は早速電源を入れて操作を始めたが、日本で使っていたものとの操作体系の違いにつまづいていた。
「貸して貸して」レイナがさっと端末に手を伸ばす。
「とりあえずメールアドレス設定して、あとはメモリーっちゃね。」レイナはてきぱきと操作してメールアドレス設定画面で俊弥に好きなアドレスを入力させると、さらに操作を続けた。
「はい、希望のメールアドレスがとれましたっと。あとは....」俊弥が介在する間も無く、レイナはどんどん端末の設定をいじっていく。
「はい、できあがり」
レイナは俊弥に新しい端末を手渡した。見ると待ち受け画面にはレイナ本人がにっこり笑った写真が貼り付けられている。
「これ、何を設定したの?」
「へへへー」レイナは悪戯っぽく笑みを浮かべると説明を始めた。
「えっと、メールアドレスはトシヤの希望通りのメールアドレスが取れたのと、待ち受け画面はレイナの一番いい写真を転送して貼っておいたから。あと、メモリーにレイナのケータイの番号を入れておいたから」レイナは端末のキーをいくつか押してその番号を表示させた。電話帳の名前の部分には「Pretty REINA」と打ち込まれていた。
「ほら、ちょっと電話かけてみて」レイナに促されて、俊弥は発信キーを押した。
すぐにレイナのバッグから着信音が聞えてきた。レイナはその着信履歴をそのまま電話帳に登録した。
「ト・シ・ヤっと、これでいつでもレイナと電話できるけんね」
俊弥はその間、ただポカーンとレイナの行動を見つめているだけだった。

「なんだか楽しそうですね?」
二人の後ろから聞き覚えのある声が響いた。
キャメイー、何しとるとぉ?」レイナはすばやく声の主を認識して反応した。
俊弥が振り返るとキャメイがニコニコしながら二人を見ていた。
俊弥は何か昨日のキャメイとは違った印象を覚えた。服装だ。
昨日はずいぶんと落ち着いた感じのロングスカートだったが、今日はミニスカートに原色系の派手派手のトップスを合わせている。髪の毛にも大きな花の髪飾りとか、腕や腰まわりにも種々のアクセサリがきらめいており、どうみても日本のギャル系である。
「なんとなくブラブラしに来ただけなんですけどね。お二人を見かけたので」
キャメイ、今日は可愛い格好しとるねー」
「今日はお仕事はお休みなので。結構可愛いでしょう?どうですか、ミムラさん?」
俊弥はそう振られて答えに窮した。普通に可愛いと褒めておけば良いのだろうが、昨日のキャメイのイメージとの差に脳が麻痺している感じだった。
「えーと、いや..」
「こーいうのはお嫌いですか?」キャメイは変わらずニコニコ笑いながらたたみかける。「いや、そんなことは...よく似合ってると...」
「ありがとうございます」
「きっと、キャメイが可愛いから困ってるっちゃね」レイナは無邪気なフォローが入る。俊弥はただうなづくしか無かった。
「ところで、お二人はこれから何か予定は?よかったら一緒にランチにしませんか?」キャメイが提案した。
「この近くにイタリアンの美味しいお店があるんですよ」
レイナは喜んでキャメイの提案に賛成し、俊弥は二人に言われるがままについて行くことになった。